1980年(昭和55年)1月16日、ウイングス初の日本公演ツアーのために妻のリンダや子供達、ウイングスのギタリスト、ローレンス・ジューバと共にニューヨークから成田空港に到着したポール・マッカートニーは、税関で荷物検査を受けた際にスーツケースの中からビニール袋に入れた大麻が見つかり、大麻取締法違反と関税法違反で東京税関成田支署に現行犯逮捕された。ポールの身柄は直ちに東京・中目黒にある関東信越地区麻薬取締官事務所に移送された。
予定されていたコンサートはすべて中止となった。中止になった「Wings Japan Tour 1980」の日程は、1980年1月21~24日・31日~2月2日:日本武道館、1月25日・26日:愛知県体育館、1月28日:フェスティバルホール、29日:大阪府立体育館。
9日間の拘留期間を終えた1980年1月25日、ポールは強制送還され成田空港を飛び立った。
とあるコラムに拘留期間中のエピソードがあったので、一部を引用させていただく——出所前日の就寝前の夜7時頃、床を叩いてリズムをとりながら「イエスタデイ」や「上を向いて歩こう」をアカペラで歌ったそうだ。囚人たちは拍手喝采し、看守の警官も見て見ぬふりをしていたという。この警官もヤクザ氏を通じてポールのサインを貰っていたというのだから当然だろう。そう、後にスネークマン・ショーのアルバム『急いで口で吸え』(81年)で話題を呼んだギャグ「はい、菊池です」は実話だったのだ。ちなみにこの警官、その後、本件が発覚して地方に飛ばされたそうである。(執筆者:中村俊夫)——。
なお、上記にある「急いで口で吸え」はジャケットの帯に書かれていたコピーで、正式タイトルは「スネークマン・ショー」である。1981年(昭和56年)2月21日にアルファレコードから発売された。
80s!